レスリング選手

【青柳善の輔】練習よりも試合で強くなる。マットに立ち続けた先に見えるロサンゼルスへの道。

「練習よりも試合する方が強くなる近道だと思っています。」

試合には正解がないからこそ面白い。このような感覚が青柳善の輔選手が競技を続ける原動力になっています。

「大学3年生まで全然勝てなかった」と本人は振り返ります。転機は世界選手権への帯同でした。樋口黎さんと成國大志さんが優勝する姿を目の当たりにして、初めて「自分も世界選手権を経験したい、優勝したい」という気持ちが芽生えました。

その後、着実に力をつけ2025年の世界選手権を優勝。続く天皇杯決勝では「正直、勝てると思っていなかった」と言う74kg級の世界チャンピオンをも下し、階級を上げての優勝を果たしています。

今回はそんな青柳善の輔選手に、競技への考え方、試合への向き合い方、そして目指すレスラー像について話を聞きました。

青柳善の輔選手の経歴

  • 神奈川県出身
  • 埼玉栄高校、山梨学院大学卒業
  • クリナップ株式会社所属
  • 2022・2023・2024年全日本選手権70kg 優勝
  • 2023・2024年全日本選抜選手権70kg 優勝
  • 2025年世界選手権70kg 優勝
  • 2025年全日本選手権74kg 優勝
  • 2026年全日本選抜選手権74kg 優勝

大学3年生まで勝てなかった日々。世界選手権帯同で芽生えた、本気の目標。

ーーー青柳選手は長く70kg級で戦ってこられたと思うのですが、この階級を選ばれていた理由は何かあるんですか?

65キロ級に下げるには体が大きくて、70キロ級に出るには体が小さいという状態でした。加えて、実績もあまりない状況でした。でもそこから70キロ級で戦えるように体作りをしていくうちに、自然と70キロ級が適性階級になっていったという感じです。

ーーー体格的に自然と70キロ級になっていったんですね。70kg級で長く勝ち続けている印象があるのですが、そのブレイクスルーになったきっかけはありましたか?

世界選手権に帯同できたことだと思います。その世界選手権で樋口黎さんと成國大志さんが優勝して、初めて「自分も世界選手権を経験したい、優勝したい」と思えたんです。それが階級を上げて戦うこと、もっと強くなって世界選手権に出たいと思い始めたきっかけです。

ーーーそして実際に2025年の世界選手権で優勝されました。優勝した直後はどんな気持ちでしたか?

すごく嬉しかった記憶があります。ただ、具体的にはあまり覚えていません(笑)。

練習するよりも、試合する方が強くなる。マットに立ち続けることで磨かれるもの。

ーーー世界選手権で優勝された後も、国体に出場されていましたね。優勝後に辞退する選手も多いと思いますが、なぜそこまで多くの試合に出るんですか?

普段から練習するよりも試合する方が強くなる近道だと思っています。勝っても負けても、その場で集中してしっかり臨む。それが大事だと思っています。

試合するために練習していて、試合しないとスポーツしている意味がないと自分は考えています。練習で全く勝てない選手にも試合で勝てたり、一瞬の判断や攻防は試合の方が出てきたりするし。試合には正解がないというところが面白いんだと思います。

ーーーそういった姿勢で数多くの試合に臨んできた中で、2025年の天皇杯決勝は特に印象的でした。70kg級の世界チャンピオンとして74kg級の世界チャンピオンと対戦しましたが、あの試合直前はどんな気持ちでしたか?

正直、勝てると思っていなかったです。「負けないようにしよう」「情けない試合をしないようにしよう」とずっと考えていました。

でもマットに入る前は、しっかり相手を倒すという気持ちに切り替えて臨みました。事前に相手にポイントを取られるパターンを考えていたんですけど、これがよく活きたかもしれません。

勝った後はもちろん嬉しかったし、少し驚きもありました。

海外の強豪と肌を合わせる。マンネリを断ち、引き出しを増やすための遠征。

ーーー最近、海外の試合や練習に積極的に参加されていますね。どういった目的や狙いがあるんですか?

ずっと同じ場所でやっているとマンネリ化を感じてしまいやすいタイプなんですよね。同じ技や展開になったり、苦手意識や慣れが生まれたりして。

だから新しい環境で新しい選手と肌を合わせることが大切だと思っています。相手が弱かろうが強かろうが、得意な技は人それぞれ違うので、そういうのを受けたり、新しい技を食らったりできることが楽しいです。

あとは、高校生や中学生に「レスリングを頑張ったらこういうことができる」という夢を少しは与えられているんじゃないかなと思ってやっています。

ーーー実際に参加されてどうでしたか?

強いだけじゃなくて、言葉が通じない部分もあるので、とりあえず指示に全部従うしかないという感じです(笑)。

3部練になることもあって、もちろんきついです。でも弱くなって帰ってきている感じはなくて、ちゃんと強くなって帰ってこれているので良い経験と良いトレーニングができていると思います。

両構えから両方の技を。研究して、翌日に試す日々の積み重ね。

ーーー海外遠征も含めて常に新しい刺激を取り入れているんですね。普段の練習で、意識していることはありますか?

いろんな技や展開を研究して、翌日に試してみるようにしています。昔は片方しかできないことが多かったんですが、今は両方から同じ技ができるようになってきて。両構えなので両方からのアタックができるようになりました。

このような感じで狙えるタイミングや技を研究したら、とりあえずやってみることを大事にしています。

ーーーそうした研究と実践の積み重ねがスタイルに出ているんだと思いますが、青柳選手のレスリングを見ていると、膝の柔らかさや体の柔らかさをすごく感じます。スタイルで意識していることはありますか?

自分は体が小さいので、コーチからよく「下から下から」と言われています。それが相手にとってやりづらくなっているんじゃないかなと思っています。

ーーーそのスタイルを武器に数多くの大会を経験されてきたと思いますが、試合直前のマットに立っている時はどんな気持ちですか?

自分はルーティンがあって、その時はもう絶対に勝つと思いながらやっています。マットに上がる前は何も考えていなかったり、負けることばかり考えていたりするんですが、マットに上がる時はしっかり勝つ気持ちでいます。

ーーーマットに上がる直前で気持ちを切り替えられるのはすごいですね。そのコツはあるんですか?

もうルーティン化していて、それをしたら切り替えられるという感覚があります。決まり事みたいなのがあると、すごく楽ですね。

70kg級での目標を達成した先へ。74kg級でロサンゼルスオリンピックを目指す。

ーーー2025年の天皇杯から74kg級に移ったのはどういった理由ですか?

「世界選手権優勝」という70kg級での目標を達成できて、やっとオリンピックを目指せる立ち位置まで来られた気がしたので74kg級に上げてオリンピックを目指すことにしました。

ーーーそもそも本気でオリンピックを目指そうと思ったのは、いつですか?

世界選手権で優勝した後です。もともとの目標は大学に入った時に全日本でメダルを取ることでした。大学3年生の時に帯同した世界選手権で初めて「世界選手権の舞台に立ちたい」と思い、そこから目標が少しずつ大きくなっていった感じです。

レスリングしかなかった。でも気づけば、それが自分の人生になっていた。

ーーーなぜここまでレスリングを続けてこられたと思いますか?

自分は勉強は得意ではなかったし、レスリング以外は何もできなかったので、大学までは本当にレスリングするしか選択肢がありませんでした。

でも就職するか続けるかを考えた時に、世界選手権の影響もあってレスリングを続けたいという気持ちが芽生えてきたんです。そこから本格的に頑張ろうと思って、今に至る感じです。

ーーーその経験を経て、今後どんなレスリング選手になりたいですか?

少し自由なレスラーになりたいなと思っています。

海外にパッと行ってしまって、いなくなってしまったりとか、そんな感じで楽しく生きていきたいです。

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