和歌山県で開催されているMIXというレスリング大会をご存知でしょうか?
この大会、とにかく他のレスリング大会とは全然違うんです。男女混合団体戦、照明やDJによる演出、マグロの解体ショー。本当にレスリングの大会?
そんなユニークな大会を企画・運営するのが加賀谷庸一朗さんです。今回は加賀谷さんにこれまでのレスリング人生やMIXにかける想いなどをインタビューしました!
加賀谷庸一朗さんのプロフィール
- 秋田県出身
- 秋田商業高校、国士舘大学卒業
- 大学卒業後は和歌山県庁の教育委員会に就職し、仕事をしながらレスリングを続ける
- 2024年8月から金融業界に転職し、営業職として活動する
ユニフォームが嫌でやりたくなかったレスリング。高校から始め遅咲きながらも全日本で入賞。
ーーー最初に加賀谷さんのこれまでの経歴を教えてください。
出身は秋田県になります。
小学校1年生から中学1年生までの7年間は空手、中学校の3年間は剣道に取り組んでいました。
そして、秋田商業高校に入学と同時にレスリングを始め、その後は国士舘大学に進学し、卒業後も続けてきました。
ーーー高校まではまったく別の競技をやっていたとのことですが、なぜレスリングを始めることになったんですか?
僕の親父が元々レスリングをやっていて、「子供にもレスリングをやらせたい」という想いがすごく強くてですね。
小学校・中学校のときから「レスリングやらないか?」と誘われ続けていたんですけど、僕は頑なに拒んでいました。あのユニフォームがめちゃめちゃ嫌だったんですよ(笑)。
そんな中、当時PRIDEやHERO’Sといった総合格闘技が流行ってて、僕も観ていると山本“KID”徳郁さんが出ていたんです。その姿がめちゃめちゃ格好良くて。「この人格好良いな」と思いつつ調べてみると、レスリング出身ということがわかりました。
そこで、「こんなカッコいい人がレスリングやってるんだったら僕もやってみようかな」と思い、高校入学と同時にレスリングを始めることにしました。すごい安易なきっかけですけどね(笑)。
ーーー憧れからのスタートだったんですね。レスリング現役時代はどんな選手でしたか?
周りと比べると遅咲きだったかなと思います。秋田商業の同期は6人いて、そのうち僕含めて3人が社会人まで続けることになるんですけど、ほかの二人と比べると勝てない時期が長く続きました。
その二人は早い段階から全国優勝を狙っていたんですけど、僕は高校3年生でインターハイの個人戦にも出られなかったんです。他校の1個下の選手に負けちゃって。
でもそのとき、「年下には負けてらんない」っていう変なプライドが芽生えてきたんです。これが僕の中で大きな転機になって、インターハイの団体戦で勝つために必死に練習しました。そしたら、その年のインターハイ個人戦で優勝した選手に勝てちゃったんです。
この勝利から自信が付いて、高校生グレコ選手権で3位、国体で優勝と成績を残すことができました。
この成績が認められて国士舘大学に声をかけていただき、大学では全日本で3位になるなどの成績を収めることができました。
ーーー悔しさやプライドが原動力になったんですね。現在も和歌山県にお住まいですが、大学卒業後に和歌山県庁に就職してレスリングを続けたのはどのようなきっかけがあったのでしょうか?
2015年に開催された和歌山国体の強化選手という形で呼んでいただいたのがきっかけです。
僕の高校の恩師である横山先生と和歌山県の森下先生という方が日体大の同期で、国士舘大学の和田監督が和歌山の強化選手として活動していたという、先生方のいろんな共通点から僕も和歌山県でレスリングをさせていただけることになりました。
ーーー和歌山県の強化選手として活動していた時期は、どのような生活を送っていたのですか?
働きながらレスリングをするという感じでしたね。
和歌山県庁の教育委員会というところに配属され、基本的には9時から15時までが勤務、その後に練習という生活でした。
練習は和歌山県の高校生とやっていました。
国内初男女混合団体戦MIXの企画・運営を担当。和歌山県だからこそできるレスリングイベント。
ーーー話は変わりますが、毎年和歌山県で開催されているMIXについてお聞きしたいです。そもそもMIXとはどのような大会か教えていただきたいです。
MIXは男女・スタイル混合の団体戦です。エンタメ要素を含んでいて、笑いありき、とにかく楽しんでもらうことが目的のレスリング大会です。
和歌山県レスリング協会が主催していて、僕は仕事柄イベントを企画したり運営したりすることに知見があるので、企画や運営として携わっています。
ーーーMIXはどのようなきっかけでスタートされたんですか?
社会人になると試合の機会が極端に減って、全日本を含めても年に4回ほどになります。さらにコロナの影響で出場できる試合がさらに減りました。
そこで、「社会人がもっと活躍できる場を提供したいよね」と和歌山県レスリング協会で話し合ったのがきっかけです。
そして、「どうせやるんだったら盛り上がる大会にしたい」と考え、男女混合だったり、フリー・グレコのどちらも可能だったり、照明や音響、催し物などでエンタメ感を出したりするなど、国内にはないやり方で実施することにしました。
ーーー他の県でMIXのような大会をやりたいと思ってもなかなか実現するのが難しいと思うのですが、和歌山県だからこそできる理由などはあるのでしょうか?
和歌山県レスリング協会には、レスリングに意欲的な人が多いのが理由の一つだと思います。その中で副会長の谷口さんという方が中心となってMIXの実現に向けていろんな取り組みをしてくださったことも大きかったですね。
あと、やっぱり関西ならではのノリの良さもあって、先生方も面白いことが大好きなんですよ。
こんな感じで、和歌山県レスリング協会には「レスリングが好き」「面白いことがしたい」という想いの人が集まっているからこそMIXが実現されたんだと思います。
ーーー3回目のMIXは僕もカメラマンとして会場に伺わせていただきました。第一印象が「こんな面白い大会を運営されていてすごい!」だったんですけど、3回でここまで大会が成長できた要因などはありますか?
僕の中では改善の余地があるなと感じてはいるんですけど、毎回課題を発見してそれを潰していくという地道な作業の繰り返しが参加者や観客の満足に繋がっているんだと思います。
1回目は普段高校生が練習で使用する小さいスペースで大会を開催しました。そしたら観客席が少なかったので、2回目は大きな会場で開催することにしました。
そしたら2回目は選手や観客の動線がわかりづらくなり、通ってほしくない場所を通っちゃうということが発生したんです。だから3回目は会場のレイアウトを変えて通るべき場所、通ってはいけない場所がわかりやすくなるようにしました。
このように、いろんな人の意見を取り入れて、どんどん改善しているから着実に成長できているという感じです。まあ、まだまだ課題は山積みなんですけど…(笑)。
ーーー地道な取り組みが成長に繋がっているんですね。加賀谷さんがMIXを企画・運営する中で大変なこともあると思いますが、一方でどのようなところに嬉しさややりがいを感じられますか?
やっぱり、参加してくれる人、見に来てくれる人がめちゃめちゃ楽しんでいる姿を見たときに「やって良かった!」と一番思えますね。
参加される人の中には世界で活躍してきた人もいるんですけど、そういう人たちって試合中に笑うことなんてないと思います。でもMIXならそれができるんです。
だからもっといろんな人にMIXを知ってもらって、参加してもらえたらなと思っています。
ひたすら笑ってほしい、楽しんでほしい。MIXはまだまだ面白くなる。
ーーー加賀谷さんはどのような想いを持ってMIXの企画・運営に取り組まれていますか?
とりあえず、ひたすら面白いことをしたいと思いながら取り組んでいます。この想いに共感してくれる人が集まって、みんなでレスリングを盛り上げられたら嬉しいですね。
あと、最近はレスリングの競技人口が減少していることもニュースになりましたよね。レスリングの競技人口減少に歯止めをかけ、むしろMIXをきっかけに増えていったら嬉しいです。
そのために中学生の部も作っていて、「レスリングは楽しい」と思ってもらえたらなと考えています。
ーーー今後はどのような取り組みを考えられているのでしょうか?
今後の目標としてビーチレスリング大会をやってみたいなと考えています。
和歌山県には白浜っていうビーチがあるんですけど、そこはビーチレスリングをやるにはめちゃめちゃ環境整っているんですよ。砂が綺麗だし、シャワーは常備されているし。熊野白浜リゾート空港は羽田から一本で来れるのでアクセスも悪くはありません。
あと、ビーチは開放的な空間なのでレスリングを知らない人にも見てもらえて普及活動にも繋がると思っています。
ビーチに来た筋肉自慢の人が飛び入り参加できる仕組みを作っても面白そうですしね(笑)。
こんな感じでやりたいことはいろいろありますが、とにかくみんなが笑える・楽しめるイベントを作っていけたらなと思っています。
興味があるものは挑戦してみることがモットー。その中で面白さを追求する。
ーーー長年レスリングに携わられていると思うのですが、レスリングを通して持った座右の銘やモットーなどはありますか?
「挑戦しなかった後悔より、挑戦した失敗」ですかね。
僕のこれまでの人生って、割と親の言うことに従って生きてきてて、やりたいことに挑戦したかって言われるとそうじゃないんですよね。それに誰かに言われてやったことって、何か悪いことが起きたときに人のせいにできちゃうじゃないですか。それも嫌でした。
そんな状況で社会人になると、レスリング以外の競技の人や職種が違う人など、これまで関わったことがないような人と接点を持つようになりました。そのとき、これまでの自分が狭い世界で生きていて、自分のやりたいことをやってきてないことに気が付いたんです。
この経験から、「もう親から絶縁されてもいい」くらいの気持ちで興味を持ったものに手を出してみることにしました。今は、自分自身に責任を持つという意味でも興味を持ったことは積極的に挑戦することを心がけて過ごしています。
ーーー最後に加賀谷さんがレスリング現役時代から大切にしている想いや価値観などがあれば教えてください。
それがないんですよね(笑)。
一方で、だからこそ柔軟な考えで面白そうなことに手を出せるのかなとは思っています。今は幅広く手を出してみて、自分の中で「これだ!」と思えたものは注力していくという感じですね。その中の一つにMIXがあります。
これからも面白そうと思ったことには積極的にチャレンジして、みんなが笑える・楽しめる取り組みができたらなと考えています。
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